FC2ブログ

本日初日! 『絞首台の上のジャーナリスト』創作ノート③

本日初日を迎える一人芝居ミュージカル短編集vol.5。
私が脚本を担当した『絞首台の上のジャーナリスト』は、18時開演の回で上演される。

先日稽古場に見学に行って通しをみせてもらい、その後で俳優と演出家と打ち合わせをおこなった。
私はそれまで、フチーク氏の著作である「絞首台からのレポート」を何度も読んでいたし、彼のプロフィールを知ったうえでフチーク氏が主役の脚本を書き上げたのだが、その時に初めて気づかされたことがあるので書いておきたい。

フチーク氏の著作の中には、以下のような文章がある。
「私は自分の書いたものを、瓶にいれたメッセージのように時の海のなかへ投げ込む。潮の流れがそれを運よくお前の足元に打ち上げてくれるだろう。するとお前は、私達の感情というカビを拭い去ってから、私達という人間のことを書いた過ぎし日の言葉を読むのだ。私達のことを理解するために。私の近しい、そして未知のものよ」(「絞首台からのレポート」225ページ 訳注より)

この、自分の書いたものを瓶にいれた手紙のように時の海のなかへ投げ込む、という、彼の信じるところが現れている文章の良さについての話があった。前回の創作ノート②でも書いたように、「絞首台からのレポート」は様々な人の縁がつなげた奇跡のリレーにより出版され、彼の死後も世界の残る著作となった経緯がある。

そのリレーは今も続いていて、ふとしたきっかけで、極東の、現代の私達がバトンを受け取り彼の著作と人生とをミュージカル化した。彼がその文章で呼びかけた「私の近しい、そして未知のもの」に、今自分たちがなっていることの不思議について話していた時、演出家の薛さんの言った「日本はナチスドイツ側の国だったのに」という言葉に虚をつかれた。

そうだった。日本は当時ナチスドイツの同盟国であり、自分はフチーク氏を死に追いやった国、彼の敵側の未来の国民なのであった。
恥ずかしながら演出家に言われるまで私はまったくそのことに気が付いていなくて、自分の不明を恥じるばかりなのだが、それと同時に「フチークにやられた!」という愉快な気持ちにもなったのである。
だって、そうであれば今回一人芝居ミュージカル短編集に取り上げられて彼の人生のエッセンスが上演されることは、彼の信じたことの、書いたものの、偉大な勝利ではないかと思えるからだ。

彼の生命が生きた時代では、時の権力は彼を愚かな反逆者、処刑される敗者としてあつかい葬り去った。
ところが彼の書いたものは世界に残って、「自分が書いたものをいつか誰かが読んで、自分たちを知ってくれるだろう」という彼の信じたことは実現しつづけている。

その本は世界中で翻訳され、かつて自分を処刑した側の敵の同盟国の未来にも届いて、死後数十年たった後にミュージカルという形にもなった。

人間は、こんなにスケールの大きな勝ちかたをすることもできるのだ。

そうフチーク氏に思わされて、そのことに、なんだかとても胸のすく思いがしたのだ。
たとえ自分がそういった勝利をおさめるがわの人間じゃなくても、人間にそういった可能性がある、そう知れることはとても気持ちがいい。

それにしても、私は自分がユリウス・フチーク氏を取り上げたつもりでいたのに、なんだかフチーク氏の「勝ち」に一役買ってしまったような感じである。今回の脚本を書いた主体が、自分だと思っていたのにそうではないような…。

だけどこういうことは、最近脚本を書く時に時々おこる。自分が「書こう」と思ってそちらへ向かっていくのではなく、書くものや相手が向こうから訪ねてきてくれたから形になるようなことが。
そんな時、私は自分が「書いた」というよりも、「手を選ばれた」ような感じがする。無から有を創作したのではなく、この世界にもとからあったものが見える形(この場合は脚本)になることに力を貸したような気がする。

「絞首台の上のジャーナリスト」も、書いている間は気づかなかったけれど多分そういう脚本だったのだ。
人間に魂というものがあればよいなと思う。魂があれば、ユリウス・フチーク氏は私達のことを知ることができるし、自分の勝ちを知ってきっと笑うこともできるからだ。

魂というものが存在するかはわからないけれど、今日から彼の人生を、今を生きる俳優が演じて生きるし、演出家、音楽家、大勢のスタッフ関係者の力で、ほんの一欠けらの断片ではあるが、70年以上前に亡くなった人間の生き様をひと時、舞台のうえに蘇らせる。
その時間を大勢のお客様と共に過ごして、彼が遠い過去から呼びかけた「私の近しい、そして未知のもの」が増えていくのだろう。
彼が書いて時の海に投げ込んだ手紙は、これからも届き続ける。

私も気づけば彼の奇跡にのリレーに巻き込まれた一人になったので、いい走者であれたらいいなと思っている。
『絞首台の上のジャーナリスト』、ご観劇頂ければ幸いです。



一人芝居ミュージカル短編集vol.5
『絞首台の上のジャーナリスト ~「絞首台からのレポート」よりユリウス・フチークによせて~』
音楽:伊藤靖浩
演出:薛珠麗
出演:金子大介(アンダーキャスト:清水幹王)

【上演日時】※他作品と同時上演になります。
4/22 18時
4/28 18時
4/30 18時
5/3 14時

【会場】
高円寺K’s スタジオ本館B1

【チケット】
4000円
ご予約はこちらから→https://ticket.corich.jp/apply/90821/

公演全体や他作品の詳細につきましては、こちら(https://note.mu/rickytickyasu/n/n099638878305)からご確認くださいませ。

スポンサーサイト



2018-04-28 : 創作ノート : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
ホーム  次のページ »

プロフィール

ものを書く縮小 劇作家のモスクワカヌです。
短編・音楽劇・ラジオドラマ・Webコラム等を書いております。 ペンネームの由来は、以前住んでいた某首都+本名。
演劇ユニット「遊戯ヱペチカトランデ」の主宰もしてますが。団体は現在お休み中です。
HP:「遊戯ヱペチカトランデ」
BLOG:「дача берёза ダーチャ・ベリョースカ」
劇団劇作家所属。劇作家女子会。メンバー
お問い合わせはyugi.mw☆gmail.com(☆を@に変えてください)にお願いします。

FC2カウンター

カレンダー

03 | 2018/04 | 05
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

前回の公演

遊戯ヱペチカトランデ
第弍回公演

MGトリコロール縮小
Musical
Mademoiselle Guillotine
~マドモアゼル・ギロティーヌ~

strong>2013/9/5(木)~9/9(月)@日暮里d-倉庫
詳細はこちらから。

過去の公演

公演は無事終了しました。ご来場ありがとうございました。

☆作家/演出として参加。

劇作家女子会×時間堂presents
劇作家女子会!
期間:2013年6月13日(木)~16日(日)
※演劇公演です。
会場:王子小劇場
女子会縮小版 劇作家女子会!HP
劇作家女子会!BLOG
遊戯ヱペチカトランデ公演
「The Giris next Door」
~おんなの子、
藪をつつけば、蛇がでる。~


2011年12/8(木)~12/12(月)
公演の詳細はこちらから。

趣向ワカヌ公演
縲発表表縮小版

「発表~いま、ここ。~」
まだ、ゆれてる。

作/演出
オノマリコ モスクワカヌ
演目/出演
リーディング『いま、ここ』
公演の詳細はこちらから。

蜻蛉玉チラシ完成縮小
「蜻蛉玉遊戯」
2010年9/1(水)~9/5(日)
公演情報はこちらから。

☆演出助手として参加。

2013年3月23日~27日
@座・高円寺
世の中と演劇するオフィスプロジェクトM
「ハルメリ2013」
台本:黒川 陽子
演出:丸尾 聡

2011年8月27日~28日
@スペース・ゼロ
非戦を選ぶ演劇人の会
「核・ヒバク・人間」
構成台本:非戦を選ぶ演劇人の会
演出:鵜山 仁

2011年3月9日~15日
@中野テアトルBONBON
オフィスプロジェクトM
「死刑執行人~山田浅右衛門とサンソン~」
作演出:丸尾 聡

2010年12月
北京蝶々「あなたの部品 リライト」
作:大塩 哲史
演出:黒澤 世莉(時間堂)
詳細はこちらから。

検索フォーム

FC2アフィリエイト

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR