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わたしの「NO!」のかたち。 後編 ー一緒に頑張ろう!という人はだいたい相手にだけ頑張らせるー

人と人とがお互いを知り合っていく時に必要な時間やプロセス。
それが、片方が子供だったり障害があったりマイノリティだったり、要するに「弱者」とレッテルが張られた相手だった時に、当然のように無視されてしまうことがある。

たとえば私の経験では、障害があるとわかると、突然自分にメリットがない相手として扱いを粗雑にしてくる人もいれば、逆にいきなり距離をつめてくる人、対応が猫なで声になる人たちがいる。そういう人たちは大体
「私はあなたを理解できます。一緒に頑張りましょう!」的なことを言う。
で、そういう人たちが何をしてくれるのかと言えば、
「私にも〇〇がある、皆それぞれ辛い。一緒にがんばろう!」というだけだ。

例えば、私は週に5日、1日8時間でコンスタントに働くことができない。身体にも精神にも体力がなく、他人と一緒に過ごすだけでかなりストレスを感じて消耗するので、週に5日、1日8時間の労働を続けると、最終的には職場を休みがちになったり病んでしまう。
だけど今の社会では、週に5日1日8時間労働が苦にならない人がスタンダードで、大きな組織の仕組みはそういう人たちにあわせて作られている。あらかじめシフト自由の職場を選んでも、有形無形の圧力で週5で1日8時間の労働を求められたりする。
スタンダードな仕組みで動ける人たちは、そのスタンダードにあわせて上手くできない性質の人間に例えばこんなことを言うのだ。

「体力がもたない? お休みの日にマラソンして筋肉つけよ!」
「精神的につらい? みんな同じだよ! いつでも話きくから!」

…いやでもさ、あなたはマラソンなんかしなくても週5で8時間働けて、それを休まず病まずに何か月だって続けられるんでしょう?
どうして私が、お休みの日にマラソンして、頑張って頑張って息を切らしながらそちら側にあわせることが前提なの?
「一緒に頑張ろう」っていうあなたが実際にしていることは、私だけに頑張らせようって、そういうことじゃないか。

ちなみにマラソンはしたよ。やったよ! 皆と同じようにできなきゃって必死な時期が私にもあったから。
でも体力つく前に体をこわしたんだよ!

誰にだってそれぞれ辛いことがあるのは知ってる。障害がなくても、すごいお金持ちでも、はた目からは何不自由なく見える人のなかにだってその人だけの地獄はある。だけど「皆大変なんだから」っていう人は、私の大変さのことは往々にして無視をするのに理解者ぶる。
そういう人たちの「私は弱者を理解してます」というパフォーマンスの材料にされるのは、ものすごく腹ただしい。しかも相手は善意のつもりだから、私が傷ついたり怒ったりするとこちらが悪者にされる。

マジョリティの善意を受け取れないマイノリティは嫌われて、施されるもので満足し感謝するマイノリティは「名誉マジョリティ」になって、「施されるものだけじゃなく、皆が当たり前に持っているものを私もほしい」というマイノリティの口を塞ぐ。どこの世界にもよくある構図だと思うけど、地獄だよなあと思う。

こういうことは嫌われる内容だとわかっているし、こう書いていると私が弱者への差別とか搾取にとても敏感で、日々そういった理不尽と戦っているような印象を与えるかもしれないけれど、全然そんなことはない。

若い頃はともかく、今はある程度自分で自分の属するコミュニティを選べるので、私はほとんどの日々を、自分の障害をことさら意識せずに平穏に暮らせる場所で過ごしている。難しいことや、出来なくて悲しいこともあるけれどおおむね幸せで、その一番大きな理由は、私の周りの人たちが私をフェアに扱ってくれるからだ。
障害を理由に差別や酷い扱いをされた経験だけなら、私はまだ全然守られていて、ライトな部類だろうとも思う。

だから施設でパニックを起こしたことを、「過剰反応」だと自分で片付けることもできるのだけれど、今回の件に関しては、私はそうしたくないのである。
あのパニックを「過剰反応」だとして、小さくしてしまいたくない。

だって、当たり前の権利や自由をごく当然のように無視される、奪われるのって、自分の生存を危うくする問題だ。
とても簡単に書けば、あの時私は「これを受け入れたら殺される!」と直感した。
大げさと思われるだろうけど、私の実感としては嘘偽りがない。

あの時あの場という限定では、無視されたのは施設の利用者さんとツアー参加者数人の権利や自由だった。
だけどそれは、普段の私の権利や自由でもあって、それが無視されたこと、それが当然になっていることに、ものすごく怖くなった。

だいたい、その施設の利用者さんは知的障害の方が多く、言語でのコミュニケーションが難しい場合が多い。健常者の感覚で会話のキャッチボールができる人のほうが少数派で、多くの人は口をきかなかったり、声をあげたり、アクションや楽器を鳴らしたりすることで自分を表現している。施設に1時間いて利用者さんを見ていれば、そのことに気づきそうなのに、「お話してください」と簡単に言われたことも「この人たち、利用者さんを見てないな」という不信感につながった。

人間同士が知り合っていく自然なプロセスを無視され、交流を求められたことに欺瞞を感じた。
「私達、共に生きています」的なパフォーマンス、嘘の材料にされると感づいた。
その嘘は、私がこれまで色んな人につかれて傷ついてきた嘘だった。
その嘘の被害にあってきた自分が、この施設では健常者のツアー参加者という側に立って加害する側に転じることを求められている。
全然納得がいかないし、応じられないと思った。
だけど、応じられない自分がこの場では我儘なのかとも考えた。
その時すぐに「自分が何を感じて何を思っているか」を言語化することが出来ず、「すごく嫌だ」ということだけが分った。
言語化できない=得体のしれない脅威に迫られているという感覚が高まり、パニックを起こした。

ここまでのことを整理して、自分に落とし込むまでにとても時間がかかったし、理想を言えば、私はあの時これらのことを言語化して相手に伝えられればよかったと思う。そこからもしかしたら建設的な話し合いがされたかもしれなかったし、そこですぐに理解し合えることはなくても、自分の思うところを伝えられればよかった。
それが出来なかった自分が歯がゆいし、結果的に「私はあなたに傷つけられた!」みたいなことだけ相手に伝わってしまったのは自分が卑怯にも思えたし、申し訳ないとも思う。

ただ、パニック状態の人は、はた目から見ると意味不明で怖いかもしれないけれど、けしてやみくもに倒れたり奇声をあげたりしているのではないし、周囲を傷つけるためにしているのではない。パニックでしか表現できない「その人に起きていること」があるのは知ってほしい。

そして、うまくコミュニケーションがとれないからといって感じる心や考える頭がないわけではないと思う。

私のことを理解してほしい、という気持ちはあまりない。
だけど、私も、あなたも、マジョリティもマイノリティも、あらゆる人がこの世界では同じ地平で生きている。自分とは世界が違うように見える人だって、立っている場所は地続きの場所だ。

見えにくいかもしれないけれど、別に見なくてもよかったのかもしれないけれど、仲良くなれなくても、分かり合うことができなくても、現実として私達は、お互い様に、共に生きている。

だから、大勢の人が普通にもっているもの、もっていてよいものを、私達にだけないものにしてほしくない。

ないもの、にされそうになった時は、今度はしっかり、相手にも伝わるように「NO」を言えるようになりたいと、そう思う。
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2018-08-29 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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プロフィール

ものを書く縮小 劇作家のモスクワカヌです。
短編・音楽劇・ラジオドラマ・Webコラム等を書いております。 ペンネームの由来は、以前住んでいた某首都+本名。
演劇ユニット「遊戯ヱペチカトランデ」の主宰もしてますが。団体は現在お休み中です。
HP:「遊戯ヱペチカトランデ」
BLOG:「дача берёза ダーチャ・ベリョースカ」
劇団劇作家所属。劇作家女子会。メンバー
お問い合わせはyugi.mw☆gmail.com(☆を@に変えてください)にお願いします。

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前回の公演

遊戯ヱペチカトランデ
第弍回公演

MGトリコロール縮小
Musical
Mademoiselle Guillotine
~マドモアゼル・ギロティーヌ~

strong>2013/9/5(木)~9/9(月)@日暮里d-倉庫
詳細はこちらから。

過去の公演

公演は無事終了しました。ご来場ありがとうございました。

☆作家/演出として参加。

劇作家女子会×時間堂presents
劇作家女子会!
期間:2013年6月13日(木)~16日(日)
※演劇公演です。
会場:王子小劇場
女子会縮小版 劇作家女子会!HP
劇作家女子会!BLOG
遊戯ヱペチカトランデ公演
「The Giris next Door」
~おんなの子、
藪をつつけば、蛇がでる。~


2011年12/8(木)~12/12(月)
公演の詳細はこちらから。

趣向ワカヌ公演
縲発表表縮小版

「発表~いま、ここ。~」
まだ、ゆれてる。

作/演出
オノマリコ モスクワカヌ
演目/出演
リーディング『いま、ここ』
公演の詳細はこちらから。

蜻蛉玉チラシ完成縮小
「蜻蛉玉遊戯」
2010年9/1(水)~9/5(日)
公演情報はこちらから。

☆演出助手として参加。

2013年3月23日~27日
@座・高円寺
世の中と演劇するオフィスプロジェクトM
「ハルメリ2013」
台本:黒川 陽子
演出:丸尾 聡

2011年8月27日~28日
@スペース・ゼロ
非戦を選ぶ演劇人の会
「核・ヒバク・人間」
構成台本:非戦を選ぶ演劇人の会
演出:鵜山 仁

2011年3月9日~15日
@中野テアトルBONBON
オフィスプロジェクトM
「死刑執行人~山田浅右衛門とサンソン~」
作演出:丸尾 聡

2010年12月
北京蝶々「あなたの部品 リライト」
作:大塩 哲史
演出:黒澤 世莉(時間堂)
詳細はこちらから。

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